(2018年度)

創造生産工学コース長 足立 高弘 教授

1 はじめに

 創造生産工学コースは,理工学部への改組にあたり,旧機械工学科から枝分れし新しく発足したコースです。理工学部における工学分野の目玉コースとして「ものづくり」教育に注力し今年で4年目となる全く新しいコースです。本コースでは,社会の多様化に対応できるよう,幅広い工学分野の知識を備え未知の問題に果敢に挑戦し自ら解決できる技術者の育成を理想とし日々教育を行っています。

2 教育カリキュラム

 本コースは,「ものづくり」の基盤である機械工学をベースとして,電気電子工学や情報工学分野の講義を取り入れ工学分野を横断した教育を行っています。特に地方大学としては珍しい人工衛星やロケットなど宇宙工学に関する教育研究環境を提供していることが特徴の一つです。また,医工学分野での貢献が期待できるバイオ流体や生物流体に関するカリキュラムも新設すべく準備中です。それらを教える教育手法は「スイッチバック方式によるプロジェクト遂行型実践教育」に基づいています。これは座学による知識伝達型の授業ではなく,課題探求型のPBL(Project Based Learning)等の手法を活用し学生の能動的な学習を促す「アクティブラーニング」となっています。今年度は,「プロジェクト実践研究」において,企業との連携教育という新しい試みを導入しました。企業で懸案となっている課題に対して,課題解決のスケジュール管理,チームによる作業分担と全体調整,自由な発想によるものづくり等を学生自身が行い課題を解決します。学生の自主性・創造性を育む高次のアクティブラーニングに相当します。これらの教育を通して単なる専門知識の習得に留まらず,それらを実際に活用できるプロジェクト遂行能力の育成を目指しています。

3 研究分野

 研究においても以下に示す通り工学分野を横断した多岐にわたる魅力的な内容です。

・宇宙工学分野:
 超小型衛星の開発研究を行っています。近年の電子機器の小型化のおかげで,超小型衛星でも役に立つミッションを行えるようになりました。超小型衛星は従来の大型衛星より低コストで,迅速に開発できるので世界中の大学やベンチャー企業が注目しています。一方で,衛星が無秩序に増えると軌道上で衝突事故を起こす危険があります。安全な宇宙開発持続のため,宇宙ごみ除去技術の研究も行っています。

・機械材料・材料加工学分野:
 異なった素材を強固に接合する素材の仲人的な研究を行っています。例えば,ダイヤモンド砥粒や窒化ホウ素をタングステンのワイヤやプレートに金属で強固に接合して切れ味の良い工具を開発します。また,ダイヤモンドは高硬度,耐磨耗性等の優れた性質を持っているため,人工関節材料等の表面へ高硬質処理を施す研究をしています。

・ライフサイクルエンジニアリング分野:
 製品のライフサイクルを考えたものづくりの方法を研究しています。豊かで便利な生活や資源の持続的な利用,地球環境の保護を同時に満たし持続させるために,資源の採掘から製造・使用さらには使用後の処理までの製品のライフサイエンスを考えたものづくりが必要です。製品ライフサイクルを適切にデザインするための評価方法を研究しています。

・熱流体工学分野:
 水や空気の流れを操り,熱と仕事・エネルギーの変換に関する研究に取り組んでいます。環境に優しい熱流体機器の開発や自然エネルギーからエネルギーを取りだす際に利用する熱交換器に関する研究を行っています。雪国秋田における雪の有効利用に関する独自アイデアも温めています。更に,生体における血管内の流れの解析を行い創薬に応用することを視野にいれた研究も行う予定です。

4 おわりに

 創造生産工学コースは定員25名という少人数のコースです。教員と学生の距離が近く,強い信頼で結ばれコミュニケーションも活発です。平成29年度は,そのような環境の中で育った学生がコースから始めての卒業し社会に巣立って行きます。限りない可能性を秘め,世界の表舞台で活躍する卒業生を思い描くとき胸が踊るとともに,その責任に身の引き締まる思いでもあります。コースの明るい未来を切り開き飛躍の年とするため,各教員が熱意と創意工夫でコース運営を行って参ります。これからも創造生産工学コースをどうぞよろしくお願いいたします。